アシュクロフト判決

 連邦議会は1994 年、児童ポルノに関する法律を改正し、「人の生殖器あるいは恥部の猥褻な展示」は「裸体の展示またはそれらの部位の外形が衣服を通して認識できるような展示」に限定されないと定めた(18 U.S.C. §2252 note)。 その後、1996 年児童ポルノ禁止法(Child Pornography Prevention Act of 1996:CPPA) は、「実際に未成年者が使われていなくても、未成年者のように見える視覚的描写は児童ポルノに含まれるという定義を定めた(18 U.S.C. § 2256(8))。従って、同法は未成年者のように見える成人の出演者を使用した視覚的描写だけでなく、モデルを使わずに作成されたコンピュータ・グラフィックスおよび描画または絵も禁止の対象とした。

アシュクロフト判決において、最高裁は、実在の児童を使用した児童ポルノを禁止した法律は「その対象が作品の制作であって、作品の内容ではない」ため、合憲であるとした。対照的に、CPPA は制作手段ではなく、内容を対象とするものであった。政府はCPPA の成立を図る理論的根拠として、「小児性愛者が児童に対して性的行為に参加するよう仕向けるためにそうした情報・素材を利用する可能性がある」「それによって、小児性愛者が自分の性的欲求を刺激する可能性がある」「その結果、実在の児童の性的虐待や性的搾取を増大させる可能性がある」などの点を挙げた。最高裁は、政府は「憲法上、個人の私的な考え方を管理することが望ましいという前提に立って法律の制定を図ることはできず」、また「 『はっきりしない将来の時点』において、違法行為が行われる可能性が高まるからといって言論を禁止することはできない」として、政府が示した理論的根拠は不十分であるとの判断を示した。

http://aboutusa.japan.usembassy.gov/pdfs/wwwf-crsreport-childpornography.pdf

(コメント)

アシュクロフト判決は、規制慎重派(中間派)にとっての模範解答といえるもので、児童ポルノ法の規制の論理は「作品の制作であって、作品の内容ではない」ことを最優先事項として理解していただきたいと思います。

表現の「内容」に着目した表現の自由の制約根拠は、「違法行為煽動」「名誉毀損」「性表現」に大別されると思います。

1.「可能性がある」(と思う :-))のロジックは、きわめてしばしば見かけるものですが、これは「違法行為煽動」アプローチです。かかる抽象的危険を理由とした表現規制は「ブランデンバークテスト」によって事実上の思想統制に当たり違憲無効との判断を連邦最高裁が示しています。

2.「集団としての○○の人権論」は、「名誉毀損」アプローチの一種といえるもので、その場合、ポルノグラフィー規制は、ヘイトスピーチ(差別表現)規制の一種という位置づけとなります。著名な思想家には、ラディカル・フェミニズムの大家であるマッキノンがいます。

3.「性表現」は、わいせつ物規制法の領域です。

「憲法上、個人の私的な考え方を管理することが望ましいという前提に立って法律の制定を図ることはできない」、これは連邦最高裁のリベラリズム宣言です。中間派の方には、こうしたリベラリズムの論理を体得していただきたいと思います。(例のAPP研究会は、反リベラリズムで、「個人的なことは政治的なことである」というラディカル・フェミニズムの立場を取っています)

(追記)

政府は「憲法上、個人の私的な考え方を管理することが望ましいという前提に立って法律の制定を図ることはできず」
The government “cannot constitutionally premise legislation on the desirability of controlling a person’s private thoughts.

「 『はっきりしない将来の時点』において、違法行為が行われる可能性が高まるからといって言論を禁止することはできない」
The government may not prohibit speech because it increases the chance an unlawful act will be committed “at some indefinite future time

http://www.law.cornell.edu/supct/html/00-795.ZO.html

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